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中線定理の証明(パップスの定理の証明)

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三角形があり、そのなかの一辺で中点をとったときに使えるのが中線定理(パップスの定理)です。ではその中線定理とはいったい何でしょうか。

f:id:ecole2:20181113081022j:plain

三角形ABCがありMをBCの中点とします。このとき次の等式が成り立ち、これを中線定理といいます。

AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)

ではこの中線定理の証明を見ていきましょう。

まずは角B,Cが鋭角の場合です。

AHとBCが垂直になるようにBC上に点Hをとると

f:id:ecole2:20181113081829j:plain

AB^2=BH^2+AH^2

=(BM+MH)^2+AH^2

=BM^2+2BM\cdot{MH}+MH^2+AH^2

=BM^2+2BM\cdot{MH}+AM^2

同じようにして

AC^2=HC^2+AH^2

=(MC-MH)^2+AH^2

=MC^2-2MC\cdot{MH}+MH^2+AH^2

=BM^2-2BM\cdot{MH}+AM^2

よって

AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)

となります。

今度は角B,Cのどちらかが鈍角の場合です。

角Cが鈍角としましょう。

図のように直線BC上に点Hをとり、AHとBCが垂直になるようにすると

AB^2=BH^2+AH^2

=(BM+MH)^2+AH^2

=BM^2+2BM\cdot{MH}+MH^2+AH^2

=BM^2+2BM\cdot{MH}+AM^2

同じようにして

AC^2=HC^2+AH^2

=(MH-MC)^2+AH^2

=MH^2-2MH\cdot{MC}+MC^2+AH^2

=AM^2-2MH\cdot{MC}+MC^2

=AM^2-2MH\cdot{BM}+BM^2

よって

AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)

となって中線定理が証明されました。

三平方の定理をうまく使うこととBM=CMを利用して式変形するのがポイントだったわけです。

なお、今の証明では角Cが鈍角としましたが角Bが鈍角の場合も左右逆にして考えれば同様ですね。

続いて別の証明を見てみましょう。今度は座標平面上における式計算によって中線定理を証明したいと思います。

三角形ABCが座標平面上にあり、点Mがちょうど原点Oの位置にあるとします。さらに辺BCがx軸上にあるとして、点Bの座標を(-s,0)、点Cの座標を(s,0)とします。そして、点Aの座標を(p,q)とおきます。このとき、

f:id:ecole2:20181226093750j:plain

AB^2=(p+s)^2+q^2

=p^2+2ps+s^2+q^2

AC^2=(p-s)^2+q^2

=p^2-2ps+s^2+q^2  なので

AB^2+AC^2=2(p^2+s^2+q^2)

となります。一方で、

AM^2=p^2+q^2,BM^2=s^2  なので

2(AM^2+BM^2)=2(p^2+q^2+s^2)

よって AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)

となって証明されました。

もう一度ここまでを振り返ってみると

最初の証明では一辺の長さを分解したり足し合わせたりして三平方の定理を使いながら式変形を行っていました。

さらにBM=CMという条件も使っての式変形なので工夫が必要な証明だったと思います。

一方で二つ目の証明では座標を設定した後はただただ機械的に計算をしていくだけなのでわかりやすいと言えるでしょう。

ただ、そうは言っても座標の設定の仕方は工夫がいるじゃないかと言いたくなるかもしれません。

実際、BCの中点を原点にしてさらにBCをx軸上に重ねることで計算をしやすくなっているからです。

このBCの中点を原点にとるという方法は中線定理の証明だけではなく図形の様々な問題を解くときに役に立つ考え方でもあります。

今回の証明を通して座標平面上での問題の解き方への応用力も身に着けていただけたら幸いです。

さらなる数学力をつけたい方は次の動画がおすすめです。

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また、高校数学では積和公式や和積公式の証明も面白いので三角関数をご存じの方はぜひこちら

積和公式と和積公式の証明 - 学びをつづる

もご参照ください。